乳房のしこりについて
乳房のしこりは、多くの女性が生涯のうちに一度は経験する可能性のある症状です。
しこりの存在に気づくと不安になるかもしれませんが、すべてのしこりが危険というわけではありません。ここでは、乳房のしこりについて詳しく解説し、どのような場合に医療機関を受診すべきかをお伝えします。
しこりのできる場所
乳房のしこりは、乳房全体のどの部分にもできる可能性があります。一般的には以下の場所で見つかることが多いです。
- 乳房の外側上部
- 乳頭の周囲
- 乳房の下部
- 脇の下(腋窩リンパ節)
しこりってどんな感じ?
しこりと言ってもどんな感じか分からない方の方が多いですよね。
しこりの感触は、その原因によって異なります。一般的な特徴としては以下が挙げられます。
硬さ:豆のように硬いものから、ゴム様の柔らかいものまでさまざま
大きさ:米粒大から数センチ大まで幅広い
形状:丸い、不規則、またはなだらかな形状
動き:指で押すと動くものや、皮膚や周囲の組織に固定されているもの
なんとなくいつもと違う様子を感じたら、一度医療機関に受診されることをお勧めします。
乳房のしこりの原因
乳房のしこりには良性のものから悪性のものまで、さまざまな原因があります。ここでは主な原因となる疾患について説明します。
乳腺炎
特徴:
- 乳腺組織の炎症
- 授乳中の女性に多いが、非授乳期にも発症することがある
- 乳房の発赤、腫れ、痛み、熱感を伴う
- 発熱や倦怠感などの全身症状を伴うことがある
早期の適切な治療が重要で、抗生物質による治療が一般的
乳腺線維腺腫
乳腺嚢胞
乳がん
特徴:
- 50代以降の女性に多いが、若年でも発症する可能性がある
- 初期は無痛のことが多い
- 触診で硬く、不整形で動きにくいことが多い
- 皮膚のくぼみや乳頭の陥没などの症状を伴うことがある
- 早期発見・早期治療が重要
上記の他、しこりの原因は様々です。「もしかしてしこりかも?」と思うことがあれば、早めに医療機関を受診しましょう。
乳房のしこりを見つけたら
しこり以外の症状
乳房のしこりは、しこりだけではなく、さまざまな症状を伴う可能性があります。
乳房のよくある症状
- 乳房の腫れや熱感
- 乳頭からの分泌物
- 乳房の皮膚の変化(発赤、肥厚、くぼみなど)
- 乳頭の変形や陥没
- 脇の下のリンパ節の腫れ
お勧めする受診のタイミング
以下のような場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。
- 新しいしこりを見つけた場合
- しこりの大きさや形状が変化した場合
- 痛みが持続する、または増強する場合
- 上記の「しこり以外の症状」が現れた場合
- 40歳以上で定期的な乳がん検診を受けていない場合
乳房のしこりの検査
乳房のしこりでの受診では、通常の問診の後、以下のような検査を行います。
※なお一般的なケースであり、すべての方に適用されるわけではありません。
マンモグラフィ検査
- 乳房のX線撮影
- 微細な石灰化や小さなしこりの発見に有効
- 痛みを伴う可能性があるが、短時間で終了
マンモグラフィ検査について詳しくはこちら
エコー(超音波検査)
- 音波を利用して乳房内部の状態を観察
- しこりが固形か液体(嚢胞)かの判別に有効
- 若年者や妊婦にも安全に実施可能
- 痛みを伴わず、リアルタイムで観察可能
乳がんとしこりについて
乳がんは日本人女性の中で最も罹患率の高いがんの一つです。
しかし、すべての乳房のしこりが乳がんというわけではありません。しこりの80-85%は良性であるとされています。
良性の場合、治療を必要としないこともありますが、良性か悪性かの判断は、医師による診断が不可欠です。
また、多くのしこりが良性である一方、乳がんの多くは、しこりから発見されています。
初期の乳がんは、多くの場合、痛みを伴わないしこりとして現れるため、定期的なセルフチェックと検診が非常に重要となります。
重要なのは月1回のセルフチェック
効果的なセルフチェックのために、以下の方法を月1回、できれば生理終了後1週間以内に行うことをお勧めします。
視診:鏡の前で両腕を上げたり下げたりしながら、乳房の形や大きさの左右差、皮膚のくぼみや赤み、乳頭の変形などをチェック
触診:仰向けに寝た状態で、指の腹で乳房全体を円を描くようになでるように触れます。脇の下から鎖骨の下まで、幅広くチェック
これらのチェックを通じて、何か異常を感じた場合は、速やかに医療機関を受診してください。たとえ良性のものだったとしても、早めに確認することで安心を得ることができます。
よくある質問(FAQ)
Q: 乳がん以外の乳房のしこりには、どのようなものがありますか?
A: 乳がん以外の乳房のしこりには、以下のようなものがあります。
乳腺線維腺腫:若い女性に多い良性腫瘍
乳腺嚢胞:液体が詰まった良性の袋状腫瘤
乳腺症:ホルモンバランスの変化による良性の変化
脂肪腫:脂肪組織からなる良性腫瘍
これらは良性であり、通常は治療を必要としませんが、正確な診断のために医師の診察を受けることが重要です。
Q: 良性のしこりが悪性化しないか心配です
A: 良性のしこりが悪性化する可能性は非常に低いです。例えば、最も一般的な良性腫瘍である線維腺腫が乳がんに変化する確率は、0.1%未満とされています。ただし、経過観察は重要です。定期的に医師の診察を受け、しこりの大きさや性状に変化がないか確認することをお勧めします。また、新たなしこりができた場合は、良性か悪性かを判断するために、速やかに医療機関を受診してください。
Q:乳がん検診は毎年受けた方がいいですか?
A: はい、乳がん検診は毎年受けることをお勧めします。日本乳癌学会のガイドラインでは、40歳以上の女性に対して、2年に1回のマンモグラフィ検査を推奨していますが、より確実な早期発見のためには、毎年の検診が理想的です。特に、乳がんの家族歴がある方や、乳がんのリスクが高いと考えられる方は、医師と相談の上、検診間隔を決めることが重要です。ぜひ診療時にご相談ください。
Q:乳房のセルフチェックはどのように行えばいいですか?
A: セルフチェックは月に1回、生理後に行うのが理想的です。鏡の前で乳房の形や大きさの変化、皮膚のくぼみや赤みをチェックし、その後仰向けになって乳房全体をくまなく触り、しこりや硬結がないか確認します。また、乳頭からの分泌物にも注意しましょう。
Q:胸が大きいと乳がんになりやすいと聞きましたが本当ですか?
A: 胸の大きさと乳がんのリスクには、直接的な関連性は認められていません。乳がんのリスク因子としては、年齢、家族歴、初経年齢、閉経年齢、出産歴、ホルモン補充療法の使用などが知られていますが、胸の大きさはこれらの因子に含まれていません。ただし、胸が大きい場合、自己検診や医療機関での触診が難しくなる可能性があるため、より注意深い検診が必要となる場合があります。また、脂肪組織が多いと、マンモグラフィでの判定が難しくなることがあるため、超音波検査を併用するなど、適切な検査方法を医師と相談することが重要です。
Q:乳がんにならないための予防法はありますか?
A: がんの完全な予防法はありませんが、リスクを低減するための方法はいくつかあります。
定期的な運動:週150分以上の中強度の有酸素運動
健康的な食生活:野菜や果物を多く摂取し、赤身肉や加工肉を控える
適正体重の維持:肥満は閉経後の乳がんリスクを高める
節酒:アルコールの過剰摂取は乳がんリスクを高める
喫煙を避ける
ストレス管理:過度のストレスは免疫機能に悪影響を与える可能性がある
ホルモン補充療法の慎重な使用:閉経症状の管理には医師と相談する
これらの生活習慣の改善に加えて、定期的な乳がん検診を受けることで、早期発見・早期治療の可能性を高めることができます。
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