マンモグラフィーを知っていますか?
マンモグラフィーという言葉を聞いたことがあっても、それがどのようなものか具体的なイメージがある方は少ないです。そんな方の「マンモグラフィーって何?」という疑問にお答え致します。また、乳がんの診断についても解説しますので、是非この記事を読んで正しい知識を身に着けてくださいね。
マンモグラフィーとは
マンモグラフィーは乳房にX線を照射し、異常がないか確認する検査です。乳腺科、婦人科、乳がん検診などで検査を受けられます。マンモグラフィーで発見される代表的な疾患は乳がんです。
乳房にX線を照射すると、乳房組織におけるX線透過性の差を利用して、乳房の内部構造を画像化することができます。乳房の内部を観察し、病気の有無を確認します。主に横方向と縦方向から放射線を照射します。乳房を圧迫することが必要であるため痛みが伴いますが、痛みには個人差があります。また、同じ方でも乳腺の状態(月経前など)によって痛みを感じやすい時期などがあります。1方向の撮影は1分程度です。
X線検査
健康診断などで胸部のX線検査(レントゲン検査)を受けたことがある方も多いと思います。それをイメージすると分かりやすいです。X線検査を受けると、医師は白と黒のモノクロの画像から異常所見を読み取ります。異常所見には腫瘤や石灰化などがあります。腫瘤をみたら境界や辺縁の性状などを評価し、石灰化をみたら形態や分布などを評価します。最終的にカテゴリー判定が行われ、精密検査の必要性を判断します。
乳がん検診
マンモグラフィーは乳がん検診で行うことで乳がんの死亡率を減少させることが科学的に証明されています。そのため、マンモグラフィーは乳がん検診で推奨されている検査です。
現在、日本の乳がん診療の画像診断は、通常、マンモグラフィーと乳房超音波検査で行われており、さらに必要となる場合、MRIなどが利用されています。乳がんの診断を行っていくには、マンモグラフィーと超音波検査を総合的に判断し、経過観察とするのか、生検などの組織診断に進むのかなどの診療方針を考えていくことになります。
乳房超音波検査と比較したマンモグラフィーのメリットとデメリット
乳房の内部を観察する検査にはマンモグラフィーの他に乳房超音波検査があります。どちらにもメリット、デメリットがあるためマンモグラフィーと乳房超音波検査を組み合わせることで総合的に診断することができます。乳房超音波検査と比較したマンモグラフィーのメリットとデメリットは以下の通りです。
マンモグラフィーのメリット
・乳腺の全体像を把握でき、過去の画像と比較しやすい。
・石灰化や乳腺構造の乱れを観察しやすい。
マンモグラフィーのデメリット
・被曝する。
・圧迫による痛みが伴う。
・乳腺が発達した乳房(閉経前女性)には不向き。
マンモグラフィーと乳房超音波検査の使い分け
これらをまとめると、マンモグラフィーでは石灰化や構造の乱れを経時的に比較することを得意としています。しかしながら、若い世代では乳腺が発達しているため、マンモグラフィーを行っても異常が発見されにくく、有用性が低いです。当院では35歳以上の方であればマンモグラフィーと乳房超音波検査の併用をお勧めしています。
乳房検査の流れ
- 受付を行います。
- マンモグラフィー撮影が行われます。
- 乳房を板で挟み圧迫しながら撮影します。痛みが伴いますが、乳房を圧迫することでより鮮明な画像を得ることができます。
- 撮影が終了したら、着替えてマンモグラフィー検査は終了です。
- 診察室で結果説明と超音波検査が行われます。
※外部委託検査の場合はマンモグラフィーのみで結果は後日となる場合があります。
マンモグラフィー検査の注意事項
以下の場合は申し出てください。
痛みが強く我慢できない方
月経周期によっては乳房を圧迫したとき強く痛みが生じることがあります。ご気分が悪くなった場合に座っていただく椅子のご用意があります。場合によっては椅子に座ったまま検査を受けていただくことも可能です。
豊胸術施行後の方
内容物破損の可能性や診断可能な範囲が限られます。
ペースメーカーの装着やポートの埋め込みをされている方。
撮影時の圧迫により位置がずれることや、リード線に支障を来す恐れがあります。
異常所見が見つかった場合
マンモグラフィーや乳房超音波検査で異常所見が見つかればすぐに乳がんと判明するということではありません。乳がん以外でも乳がんと同じような異常所見を示す病気があります。
異常所見が見つかった場合、乳がんであるのか、乳がんではない別の病気であるのかを診断するために精密検査を行います。精密検査にはMRI検査や乳房組織診などがあります。
乳房組織診
がんと確定するためには乳房組織診を行います。乳房組織診では乳房に太い針を刺し、乳房組織を採取します。異常所見が見つかった場所をしっかりと狙うためにX線や超音波を使いながら針を刺します。採取した組織を顕微鏡で観察し、がんであるか否か診断します。
乳房トモシンセシスとは
トモシンセシスtomosynthesisとは断層撮影tomographyと合成synthesisを合わせた造語です。乳房トモシンセシスは通常のマンモグラフィーと同様に乳房を挟んだまま、X線装置を円弧状に移動させて複数回の低線量照射を行い、取得したボリュームデータを再構成して高精度の乳房断層画像を作成する検査です。
乳房トモシンセシスとマンモグラフィーとの比較
マンモグラフィーと比較して撮影時間および被曝線量が増加しますが、乳房トモシンセシスを用いることによる一番の利点は腫瘤における微細鋸歯状やスピキュラなどの辺縁の性状を鮮鋭に描出できること、構築の乱れ、特にスピキュラなどの線構造の鮮明化などがあり、異常所見を見つけやすくなります。また、異常所見がより鮮明になることで、悪性かどうかの確信度の向上にも役立ちます。
マンモグラフィーでは立体構造を平面に投影するため、病変前後の乳腺組織も一緒に写ってしまいますが、乳房トモシンセシスは前後の乳腺組織を取り除くことが可能であるため、乳腺組織の重なりによる濃度上昇や左右非対称性などの影響を取り除いて評価できます。したがって、マンモグラフィーでは診断が難しい症例に対し、乳房トモシンセシスでは悪性を強く示唆する所見として判断できたり、逆に良性所見として判断できることもあります。
乳がんになりやすい方
乳がんになった方がどういった方なのかを調べる研究はこれまで多く行われてきました。一般に因果関係が認められるものをリスク因子といいます。研究で判明したリスク因子には、高齢初産、未婚、早い初経、遅い閉経、肥満、高齢、高い社会階層、乳がんの家族歴、乳がんの既往、良性乳腺疾患の既往などがあります。これらに該当する方が全員、乳がんになるということではありません。しかしながら、リスク因子を持つ方はリスク因子を持たない方に比べて乳がんになりやすいです。
女性に関するリスク
独身女性は既婚女性よりも乳がんリスクが高いこと、既婚者においても初産年齢が高くなるにつれて乳がんリスクが高くなること、出産児数が少ない女性のほうが乳がんリスクが高いことが報告されています。
社会階層のリスク
アメリカやイギリスでは教育レベルや収入、社会階層で階級分けすると、上位の女性のほうが乳がんリスクが高いと報告されています。日本でも社会階層が高い専門技術的職業に就く女性がとくに乳がんリスクが高いとされています。教育歴や職業は結婚、妊娠、初産年齢、食生活などの他のリスク因子と関連します。
肥満のリスク
体重が重い女性、肥満した女性では乳がんリスクが高く、特に閉経した後では体重が増加するにつれて乳がんリスクが上昇します。肥満度と乳がんリスクの関係は60歳以上で明らかで、特に、20歳以降に肥満度が増加した女性の閉経後での乳がんリスクは大きく上昇します。
ホルモン補充療法のリスク
ホルモン補充療法による乳がん発生のリスクについても多くの疫学的研究が行われ、現時点では5年以下の短期投与では乳がんリスクは上昇しませんが、10-20年の長期投与ではリスクの上昇が認められています。
乳がんは女性では罹患数が一番多いがんで、治療可能な病気です。早期診断、早期治療が大切です。乳がんの自覚症状はしこりと言われますが、絶対ではありません。違和感やいつもと違うなどあれば受診してください。また、普段のご自身の乳腺の状態を確認するためにも健診を受けていただくことをお勧めします。
私たちのクリニックは、女性の院長が在籍しており、女性ならではのお悩みやご不安なことも患者さんに寄り添ってカウンセリングをいたします。
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