動脈硬化検査とは
動脈硬化検査は、血管の硬さや詰まり具合を調べる検査です。主にABI(エービーアイ)検査とCAVI(キャビ)検査の2つの方法を組み合わせて行われます。これらの検査により、あなたの「血管年齢」を知ることができ、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを予測することが可能になります。
検査時間はわずか5分程度で、痛みもありません。ベッドに横になって血圧計のような機器を装着するだけで、血管の状態を数値で客観的に評価できる画期的な検査方法です。近年、生活習慣病の増加とともに動脈硬化による重篤な疾患が問題となっており、この検査の重要性が高まっています。
動脈硬化とは
動脈硬化とは、血管の壁が厚くなったり硬くなったりして、血液の流れが悪くなる状態を指します。健康な血管は柔軟性があり、心臓の拍動に合わせて伸び縮みしながら血液を全身に送り届けます。しかし、加齢や生活習慣の影響で血管壁にコレステロールなどが蓄積すると、血管は次第に硬くなり、内腔も狭くなってしまいます。
動脈硬化が引き起こすリスク
動脈硬化が進行すると、以下のような深刻な病気を引き起こす可能性があります。
心筋梗塞:心臓の血管が詰まり、心筋が壊死する病気
脳梗塞:脳の血管が詰まり、脳細胞が損傷を受ける病気
閉塞性動脈硬化症:主に足の血管が詰まり、歩行困難や壊疽を引き起こす病気
大動脈瘤:大動脈の壁が弱くなって膨らむ病気
厚生労働省の人口動態統計によると、心疾患と脳血管疾患を合わせた死亡者数は、がんに次いで多くなっており、動脈硬化が関与する疾患による死亡は決して他人事ではありません。
動脈硬化の症状
動脈硬化は「サイレントキラー」と呼ばれることがあります。これは、初期段階では自覚症状がほとんどないためです。症状が現れた時には、すでに病気がかなり進行していることが多く、以下のような症状に注意が必要です。
- 胸の痛みや圧迫感
- 息切れや動悸
- 足の冷えやしびれ
- 歩行時の足の痛み(間欠性跛行)
- めまいや頭痛
- 記憶力の低下
近年の傾向
日本動脈硬化学会の報告によると、食生活の欧米化や運動不足、ストレス社会の影響により、動脈硬化による疾患は若年化の傾向にあります。特に30~40代での発症例が増加しており、早期発見・早期対策の重要性が高まっています。また、新型コロナウイルス感染症の影響で在宅勤務が増え、運動不足による動脈硬化のリスクがさらに高まっているという指摘もあります。
動脈硬化検査を受けた方が良い方
以下に該当する方は、動脈硬化検査を受けることを強く推奨します。
- 40歳以上の方
- 高血圧の診断を受けている方
- 糖尿病または血糖値が高めの方
- 脂質異常症(高コレステロール血症)の方
- 喫煙習慣がある方
- 運動不足の方
- ストレスを感じることが多い方
- 家族に心疾患や脳血管疾患の既往がある方
- 足の冷えやしびれを感じる方
- 食生活が不規則な方
- 睡眠不足が続いている方
これらの項目に複数該当する場合は、特に注意が必要です。動脈硬化は複数の危険因子が重なることで進行が加速されるため、早めの検査をお勧めします。
動脈硬化検査方法について(ABI・CAVI検査)
動脈硬化検査では、ABI検査とCAVI検査を同時に実施します。両方の検査を組み合わせることで、血管の状態をより正確に評価することができます。
ABI検査(足関節上腕血圧比検査)
ABI(Ankle Brachial Index)は、足首と上腕の血圧を測定し、その比率を算出する検査です。この検査により、主に下肢動脈の血流状態や詰まり具合を評価できます。
◆検査の仕組み
健康な人の場合、足首の血圧は上腕の血圧とほぼ同じか、やや高い値を示します。しかし、足の動脈に狭窄や閉塞があると、足首の血圧が低下します。この血圧差を数値化することで、動脈の詰まり具合を客観的に判断できます。
◆ABI検査のメリット
・痛みがない
・短時間で結果が判明
CAVI検査(心臓足首血管指数検査)
CAVI(Cardio Ankle Vascular Index)は、心臓から足首までの動脈の硬さを測定する検査です。血管の硬化度合いを数値化し、「血管年齢」として表示されます。
◆検査の仕組み
心臓から送り出された血液が動脈を通って足首に到達するまでの時間と、その間の血圧変化を測定します。血管が硬いほど血液の伝播速度が速くなるため、この原理を利用して血管の硬さを評価します。
◆CAVI検査のメリット
・血圧の影響を受けにくい正確な測定
・早期の動脈硬化を検出可能
・血管年齢として分かりやすく表示
当クリニックでの動脈硬化検査について
検査の手順
検査準備:軽い服装で来院し、検査着に着替えます
体位:ベッドに仰向けになります
機器装着:両腕と両足首に血圧計を装着し、胸部に心音マイクを取り付けます
測定:約5分間安静にしていただきます
結果:検査終了後、すぐに結果をお渡しします
検査中は特別な準備や制限はありません。
ただし、検査の2時間前からはカフェインの摂取を控え、検査直前の喫煙は避けていただくようお願いします。

検査結果を受けて
検査結果は、数値とグラフで分かりやすく表示されます。結果によって、以下のような対応が推奨されます。
◆正常範囲の場合
現在の生活習慣を維持し、年1回程度の定期的な検査で経過観察を行います。ただし、正常範囲内でも血管年齢が実年齢より高い場合は、生活習慣の見直しが必要です。
◆境界域の場合
生活習慣の改善を積極的に行い、3~6ヶ月後に再検査を受けることをお勧めします。この段階での対策により、動脈硬化の進行を抑制できる可能性が高くなります。
◆異常値の場合
詳細な検査や専門医への紹介を行います。薬物療法や生活習慣の大幅な改善が必要になる場合があります。早期の治療開始により、重篤な合併症を予防できます。
検査費用について
動脈硬化検査(ABI+CAVI) 3,300円
動脈硬化の予防法(自宅でできること)
動脈硬化は生活習慣病の一つであり、日々の生活習慣を改善することで予防・改善が可能です。以下の方法を組み合わせて実践することが重要です。
食生活の改善
推奨される食品
避けるべき食品
- 魚類(EPA・DHAが豊富)
- 野菜・果物(抗酸化物質が豊富)
- 全粒穀物(食物繊維が豊富)
- ナッツ類(良質な脂質を含有)
- オリーブオイル(オレイン酸が豊富)
- 揚げ物や加工食品(トランス脂肪酸を含有)
- 塩分の多い食品(1日6g未満を目標)
- 糖分の多い飲み物や菓子類
- 動物性脂肪の多い食品
運動習慣の確立
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動指針」に基づく運動を実践しましょう。
有酸素運動
筋力トレーニング
- ウォーキング:1日8,000歩以上
- ジョギング:週3回、1回30分程度
- 水泳:週2~3回、1回30~45分程度
- サイクリング:週2~3回、1回30分程度
- 週2~3回、大筋群を使った運動
- 自宅でできる腕立て伏せ、スクワット、腹筋運動
ストレス管理
慢性的なストレスは動脈硬化を促進します。以下の方法でストレス軽減を図りましょう。
- 十分な睡眠(7~8時間)
- リラクゼーション法(深呼吸、瞑想)
- 趣味や娯楽の時間を確保
- 適度な休息とリフレッシュ
禁煙・節酒
◆禁煙の効果
喫煙は動脈硬化の最大の危険因子の一つです。禁煙により、1年以内に心疾患のリスクが大幅に低下します。
◆適度な飲酒
日本酒換算で1日1合程度までに留めることが推奨されています。過度の飲酒は血圧上昇や動脈硬化を促進します。
よくある質問(FAQ)
Q:検査は痛いですか?
A: まったく痛みはありません。血圧測定と同程度の圧迫感を感じる程度です。注射や造影剤の使用もないため、安心して受けていただけます。
Q:検査時間はどのくらいかかりますか?
A: 実際の測定時間は約5分程度です。準備を含めても15分程度で完了します。
Q:検査前に注意することはありますか?
A: 特別な準備は不要ですが、検査2時間前からカフェインの摂取は控え、検査直前の喫煙は避けてください。また、締め付けの強い服装は避けることをお勧めします。
Q:どのくらいの頻度で検査を受けるべきですか?
A: 正常な方は年1回、異常値や境界域の方は3~6ヶ月に1回の検査をお勧めします。生活習慣病をお持ちの方は、医師と相談の上、適切な間隔をご提案いたします。
Q:若い人でも検査を受けるべきですか?
A: 近年、動脈硬化は若年化傾向にあります。家族歴がある方、生活習慣に不安がある方は、20~30代でも検査を受けることをお勧めします。
動脈硬化検査は、将来の重篤な疾患を予防するための重要な検査です。症状が現れる前に血管の状態を知ることで、適切な予防策を講じることができます。定期的な検査と生活習慣の改善により、健康な血管を維持し、充実した人生を送りましょう。
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